【循環器総論-4】心拍出量その2

循環器総論

循環器総論―心臓の生理

前回に引き続き、心拍出量ついて説明します。

少し復習します。

  • 心拍出量 = 心拍数 × 一回拍出量

Frank-Starringの法則とForrester分類

http://pebbleinsky.hateblo.jp/entry/20100425/1272163814
  • Ⅰ群 安静
  • Ⅱ群 利尿剤、血管拡張剤
  • Ⅲ群 輸液、強心剤、ペーシング
  • Ⅳ群 強心剤、大動脈バルーンパンピング(IABP)、経皮的人工心肺(PCPS)

次に心拍出量の構成要素である、前負荷後負荷心収縮力ついて説明します。

Frank-Starringの法則からある程度までは心筋の伸展により、次の収縮が強くなることを示しました。

  • 前負荷とは拡張周期の心筋繊維の伸長度を意味しています。

つまり、心筋が延びる時は心室内に血液が充満する時ですので、前負荷は心室内血液量に比例します。

  • 前負荷 = 心室内血液量

では前負荷を測るためにはどうすればいいのでしょうか。

直接心室の伸長を見ることはできません。心室内血液量を測定するためにはSwan-Ganz Catheter(スワンガンツカテーテル) を頸静脈から挿入する必要があります。

Swan-Ganz Catheterでは以下のことが測定できます。

  1. 肺動脈鍥入圧
  2. 肺動脈圧
  3. 右室圧
  4. 右房圧
  5. 中心静脈圧
http://med-infom.com/?p=937

上記は全て右心系の測定ですが、Swan-Ganz Catheterはさらに肺末梢血管を閉じることができます。

肺末梢血管を閉じると拡張期に大動脈弁が閉鎖し、僧帽弁が開放されている時、肺末梢血管・左房・左室が同じ空間となるため、同じ圧となります。

  • 肺動脈楔入圧≒平均左房圧≒左心室拡張末期圧
  • 熱希釈法とは

カテーテル注入用側孔(通常右心房に位置する) から、冷水を注入し血液と混合して先端のセンサーで温度変化を測定します。冷水の注入量は一定のため、一度下がった温度が元の体温に戻る時間を測定し心拍出量を測定します。

だいたい3−5回の平均の値を心拍出量とします。

また、個人差が大きいため心拍出量を体表面積で除した心系数で評価することが多いです。

心系数の正常範囲は2.5-4.5L/min/m2です。

また、拡張期終末の容量と圧の関係は心筋壁のコンプライアンスに依ります。

  • ●コンプライアンスが低い心筋少量の容量増加で圧は大きく上昇します
  • ●コンプライアンスが高い心筋容量増加が大きくても圧上昇はわずかです
https://www.edwards.com/jp/uploads/files/support-guide-ecce-hm.pdf

このように心筋の性質により前負荷の効果は変化します。

加齢や生活習慣病などで動脈硬化が強くコンプライアンスが低い心臓だと治療に反応しにくいことが考えられます。

逆に比較的若くコンプライアンスが高い心臓だと治療も反応しやすいと言えます。

4 後負荷とは

後負荷とは心臓から駆出された血液の流れやすさと言い換えることができます。

つまり、血管の性状が大きく関与します。

例えば、同じ心拍出量であれば狭い血管より広い血管のほうが流れやすいので後負荷が小さいと言えます。

また、硬い血管より柔らかい血管のほうが血圧がかかった際に伸展することができるため後負荷は小さいと言えます。

  • ●左心室では駆出した血液は全身へ流れる(体循環)ため、左心室の後負荷は体血管抵抗です。
  • ●右心室では駆出した血液は肺へ流れる(肺循環)ため、右心室の後負荷は肺血管抵抗です。

後負荷は前負荷と逆で左心機能とは逆に比例します。

前負荷の場合大きくなればなるほど心拍出量は多くなります。

一方、後負荷大きくなればなるほど血管抵抗が大きくなるので心拍出量は少なくなります。

正常であれば、後負荷が増加しても一回心拍出量に大きな影響はありません。

しかし、心不全のような心収縮力が低下している状態では後負荷の影響が大きくなります。

https://www.edwards.com/jp/uploads/files/support-guide-ecce-hm.pdf

後負荷は末梢血管抵抗大動脈弁(肺動脈弁)狭窄血液粘稠度動脈の弾性心室容積などで規定されます。

後負荷が大きくなる原因はいろいろありますが、臨床でよく遭遇することは術後ICUで体温低下カテコラミン作用による末梢血管の収縮です。

また、重症大動脈弁狭窄症による心不全患者では後負荷は非常に高いです。

逆に後負荷が低下する原因は感染症による末梢血管の拡張です。

これは、感染症になると病原菌に対する免疫反応の一つとして発熱があります。発熱時には逆の反応として末梢血管を拡張させ発汗を促し、熱放散させるように働きます。

または極度の脱水により相対的に低下することがあります。

5 収縮力とは

収縮力とはそのままの意味で心筋繊維自体の短縮する力のことを言います。これは前負荷のような二次的な反応ではなく、心筋本来の持っている能力のことです。

心収縮力に影響する要素はいくつもありますが特に重要なことは交感神経です。

交感神経が興奮すると心収縮力や心拍数が上がります。

薬物で投与する場合も同様の反応を示します。特にアドレナリンなどは非常に強い反応を示します。

また、心収縮力が低下する原因で重要なのはアシドーシスの進行です。

アシドーシスとは血管内のイオンバランスが崩れPHが低下することで様々な症状を引き起こすことです。

まとめ

  • 前負荷とは
  • 前負荷=心室内血液量
  • 右心系であれば、右心室の拡張期容量、つまり体循環の血液量です。
  • 左心系であれば、左心室の拡張期容量、つまり肺循環の血液量です。

前負荷を上げるためには輸液投与することです。

肺高血圧症などの病態では左心系に血液が流れないため体血圧は下がりやすいです。

  • 後負荷とは
  • 左心室では駆出した血液は全身へ流れる(体循環)ため、体血管抵抗です。
  • 右心室では駆出した血液は肺へ流れる(肺循環)ため、肺血管抵抗です。
  • 心収縮力
  • 心筋繊維自体の短縮する力のことです。

以上のように、前負荷・後負荷・心収縮力を説明しました。

Frank-Starring曲線との関連性

これらがFrank-Starring曲線をどのように変化させるかを見ていきます。

Frank-Starring曲線上を右上に移動させるためには前負荷の上昇後負荷の低下が必要です。

逆に、左下に移動させるためには前負荷の低下後負荷の上昇が必要です。

心収縮はFrank-Starring曲線そのものを移動させます。

心収縮力が上昇すれば左上へ、低下すれば右下へ移動します。

  • 縦軸=心系数=前負荷
  • 横軸=肺血管抵抗=後負荷

と読み替えると考えやすいです。

http://pebbleinsky.hateblo.jp/entry/20100425/1272163814

今回の内容は心不全治療の基本的な考え方となっています。

これで今回の内容は終わります。お疲れ様です。

次回は心臓をサポートする機械について説明します。

Image by Myriams-Fotos from Pixabay

コメント

タイトルとURLをコピーしました