循環器総論―心臓の生理
- 補助循環とは
- 大動脈バルーンパンピング(IABP)
- 経皮的人工補助法(PCPS)
- 左心補助装置(L-VAD)
- 心移植
今回は左心補助装置(L-VAD)を説明します。
4. 左心補助装置(L-VAD)とは
左心補助装置(Left Ventricular Assist Device)とは急性あるいは慢性的に左心機能が高度に低下し、血液を全身へ送ることができなった心臓の代わりに、血行動態を維持する装置のことです。
この装置は手術により直接心臓に装着されます。装着後は自由に歩くこともできます。
左心補助装置にはポンプの役割をする血液ポンプを体内に植え込むタイプ(体内設置型)と体外に露出しているタイプ(体外設置型)の2種類があります。
どちらのタイプも脱血管を心尖部、送血管を上行大動脈に挿入します。
多くの心補助装置は左心系を補助するためLVADと呼ばれます。
一方、特殊な場合は右心系に装着されることがあります。(Right VAD)
- ●植込型補助人工心臓の適応疾患
心臓のポンプ機能が低下する疾患に適応となります。
後述する心移植と適応はほとんど同様です。
- 拡張型心筋症
- 拡張相肥大型心筋症
- 虚血性心疾患
- 先天性心疾患 など
- ●体外設置型補助人工心臓の適応疾患
一般的に全ての心原性ショック症例が適応になります。
多臓器不全や敗血症などの全身状態不良で補助人工心臓の装着手術に耐えられない状態、補助人工心臓装着手術により得られるメリットを上回る場合に選択されます。
また、ガイドライン上で補助人工心臓の適応を定めております。
以下参照
https://www.j-circ.or.jp/old/guideline/pdf/JCS2013_kyo_h.pdf
- Bridge to transplantation(BTT)
植え込み型LVADの保険適応は心移植までの期間のみです。長期にわたる移植待機期間を乗り切るために使用されます。
そのため、心移植を前提で実施されるため、適応疾患も心移植と同様になります。
- 2. Bridge to candidacy(BTC)
血行動態が破綻しており、現状では心移植の適応にはならないが、左心補助装置(LVAD)を装着することによって全身状態が改善し、移植可能になる可能性がある症例に対して、心移植適応判断を保留して、LVADの植え込みを実施することです。
上記の理由でのLVAD装着は日本では認められておりません。
- 3. Destination therapy(DT)
心移植の適応が全くない症例で、内科的治療では予後が悪く、LVADによって予後が改善する可能性が高い症例に対して実施することです。
欧米では長期予後が改善していますが、日本では保険適応外治療です。
- 4. Bridge to bridge(BTB)
植え込み方LVADの適応がない症例に対して救命目的で体外設置型VADを使用することがあります。
そのような症例が回復し、心移植の適応を満たす際に、移植待機期間のQOLを損なわないよう植え込み型LVADへ変更することをBridge to bridgeといいます。
- 5. Bridge to decision(BTD)
BTBは植え込み方LVADの適応がない症例に対する実施でしたが、Bridge to decisionは移植適応判断が困難な症例に対して移植適応判断ができるまでの救命手段として実施することです。
- 6. Bridge to recovery(BTR)
LVADを装着後、心機能が回復することをBridge to recovery(BTR)と呼びます。
心機能が回復し、LVADを離脱することができる割合は10%程度です。
上記1−3までが日本で議論される内容であり、現状では心移植前提であり、移植までの待機期間中のみの使用となっています。
- ●左心補助装置の合併症
前回までの装置と同様で血管内に遺物としての機械が入るため、合併症も同様に血栓塞栓、出血、感染などが挙げられます。
- ●インぺラ(IMPELLA)とは
2017年から日本で植え込み型左心補助装置としてIMPELLAが保険適応になりました。
今までの植え込み型は機械は体内にある状態でしたが、心臓内に植え込みができるのはIMPELLAが初です。
左心補助装置は全て開胸術が必要になり、侵襲が大きく、緊急症例では対応困難でしたが、IMPELLAはカテーテルで挿入するためより低侵襲に施行でき、対応症例も拡大できる可能性があります。
今回はこれで終わります。お疲れ様でした。
次回は心移植について説明します。
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