【循環器総論-11】 BNPとトロポニン

循環器総論

循環器総論―検査

今回はBNPとトロポニンについて説明します。

  1. 心電図
  2. 胸部レントゲン
  3. 採血、BNPとトロポニンの意味
  4. 経胸壁心エコー検査
  5. 冠動脈CT検査
  6. 心臓カテーテル検査

3. 採血、BNPとトロポニンの意味

心臓の検査で採血して何を見ているか。

心臓の採血項目では最もよくみられます。

BNPとは

BNPとは「脳性ナトリウム利尿ペプチドBrain Natriuretic Peptide」の略称で、心臓で分泌されるホルモンのことです。

1988年、Sudohらによって豚の脳から単離されたペプチドホルモンです。

最初は脳から発見されたため脳性とついていますが、後の研究で以前からわかっていた心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP:Artial Natriuretic Peptide)と同様に主に心臓で分泌されるペプチドホルモンであり、ANPが主として心房から分泌されるのに対しBNPは主に心室から分泌されることが示されています。

  • BNP脳性ナトリウム利尿ペプチドであり、心室から分泌
  • ANP心房性ナトリウム利尿ペプチドであり、心房から分泌

BNP・ANPの作用は同様で末梢血管拡張作用と利尿作用を要しています。

病気が見えるVol2 p64
  • ●ではどんなときにBNPが出るのでしょうか

心機能低下により心不全となり、体内に水分が溜まっている状態、つまり、血管内に水分が多く前負荷が大きくなると、心房筋・心室筋が伸展されます。

心筋の伸展をトリガーとしてBNP・ANPの分必量が増加し、末梢血管を拡張され水分を指先や足先に流し、心臓に戻ってくる量を減らします

また、利尿作用により直接体外に排泄しようとします。

そのため、心筋の伸展が強ければ強いほど分泌量も増加するため心不全の重症度評価治療効果判定に用いられます。

外来で採血して、「心臓の値はいいですね。」と言われるのはこの値を見ています。

普段はBNPの分泌は基準値は18.4pg/mL未満と低値です。

大体の目安ですが、BNPが200以上あり、心不全症状があれば入院加療が必要となりる可能性が高いです。

http://med.matsusaka.or.jp/kenshin/wadai15.html

トロポニンとは

  • トロポニンとは横紋筋細胞のタンパク質成分の一種です。横紋を有している、筋骨格筋と心筋細胞内に見られます。

心筋トロポニンI心筋トロポニンTは心筋細胞にのみ認められるため心筋障害マーカーの一種です。

臨床的に重要になってきます。

正常時では血中濃度は非常に低く、検出できません。

しかし、心筋梗塞などの心筋細胞が破壊された時心筋内から放出され検出できるようになります。

そのため、心筋トロポニンは心筋梗塞の際に非常に特異的に上昇するため有用されています。

トロポニンIとトロポニンTは臨床的に差はないので同様に扱われます。

病気が見えるVol2 p95

  • ●いつ測定するのか

臨床的には急性冠症候群・心筋梗塞を疑う症状がある際に測定します。

具体的な症状は以下のとおりです。

  • 首、肩、腕、あご、背中に放散する20分以上継続する重度の急性胸痛の発現
  • ●触診で胸壁圧痛がないこと(筋骨格系の圧痛ではないこと)
  • ●呼吸困難
  • 発汗
  • ●吐き気・嘔吐
  • 心筋虚血を示唆するECGの変化

*硝酸薬とは冠動脈を拡張させ、胸痛症状を緩和させます。

病気が見えるVol2 p85

外来でできる検査はほとんど全て補助診断であるため、どれか一つが陽性であればすぐに診断できるわけではありません。

特に症状採血異常心電図異常3つのうち2つがあれば非常に急性冠症候群・心筋梗塞が疑わしいです。

一度心筋梗塞を疑えばすぐに心臓カテーテル検査ができる病院へ行く必要があります。

心筋トロポニンの経時変化

胸痛が出現してからすぐに上昇するわけではなく、心筋が壊死して細胞内のトロポニンが血中に放出され検出できる濃度になって初めて検出されます。

だいたい胸痛の症状から4−8時間ほどで初めて検出され、12−48時間でピークになります。重症症例であれば数日間上昇したままのこともあります。

https://medi.atsuhiro-me.net/entry/2015/12/23/134844

逆に胸痛症状があっても発症から6-12時間後のトロポニンが検出されなければ心筋梗塞は限りなく可能性は低く否定できます。

  • ●その他心筋マーカーには図のようにミオグロビンH―FABPCK・CK―MBミオシン軽鎖などもあります。

臨床的にはCK-MBがトロポニンの次によく経過フォローされます。

CK-MB(creatine kinase-muscle brain)とは

転移酵素の一つであり、骨格系に多く存在するCKの一種である。

細胞内にあるCKミトコンドリア内に存在するCKがあります。

細胞内のCKは場所により種類が少し異なります。

  • ●CK-BB 脳、子宮、腸管など
  • ●CK-MB 心筋
  • ●CK-MM 全身の骨格筋
  • ※B: brain、M: muscle

筋力トレーニングでもCKは上昇しますが、CK―MBの割合が10%を超える心筋障害を疑うため他の検査を行います。

CK-MBは心筋梗塞発症から4-6時間で上昇し始め12-24時間でピークなり2−3日で 正常化します。

トロポニンより早く上昇しますが特異度はトロポニンより低いです。

まとめ

  • BNP

BNPとは「脳性ナトリウム利尿ペプチドBrain Natriuretic Peptide」の略称で、心臓で分泌されるホルモンのことです。

  • BNP脳性ナトリウム利尿ペプチドであり、心室から分泌
  • ANP心房性ナトリウム利尿ペプチドであり、心房から分泌
  • トロポニン

トロポニンとは横紋筋細胞のタンパク質成分の一種です。横紋を有している、筋骨格筋と心筋細胞内に見られます。

心筋トロポニンIと心筋トロポニンTは心筋障害マーカーの一種です。

今日はこれで終わります。お疲れ様です。

次回は経胸壁心エコーについて説明します。

Image by MirelaSchenk from Pixabay

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