循環器総論―検査
- 心電図
- 胸部レントゲン
- 採血、BNPとトロポニンの意味
- 経胸壁心エコー検査
- 冠動脈CT検査
- 心臓カテーテル検査
今回は循環器の検査で最も大切な心エコーについて説明します。
心エコーとは
心エコーとは心臓超音波検査のことです。
心臓に周波数の高い超音波をあてて跳ね返ってくる超音波をリアルタイムで画像構築しています。
レントゲンやCTとは異なり、X線を使用しないため放射能による心配もありません。
また、レントゲンやCTなどの画像検査は一瞬の形をとってるため動いている臓器の評価には不向きです。
- ●非侵襲的
- ●人体に障害がない
- ●比較的安価(レントゲンやCTと比べて)
- ●どこでも使用できる
心臓だけでなく超音波検査は腹部評価や血管評価にも有用されます。
心エコー検査にはいくつか種類があります。
- ●経胸壁心エコー検査
- ●経食道心エコー検査
- ●3D心エコー検査 など
一番頻用されている経胸壁心エコーについて説明します。
4. 経胸壁心エコー検査
超音波は2.0-7.5MHzの周波数振動子が用いられ、超音波が組織に吸収されれば戻ってこないため黒く写ります。
- 水<血液<脂肪<骨<空気の順で白く見えます。
そのため肺が心臓の前にくると白く写ってしまい、見えにくくなるため検査するときは左半側臥位で肺と心臓を離すようにします。
心エコー検査で評価する際に必要な断面は4つあります。
- 傍胸骨左縁長軸断面象
- 傍胸骨左縁短軸断面象
- 心尖部四腔像・三腔像・二腔像
- 心窩部下大静脈断面図
傍胸骨左縁長軸断面象
正常な心臓であれば胸骨左縁第3.4肋間からアプローチし、大動脈と心尖部に水平になるようにプローべを傾けます。
心不全などの心疾患の既往があり心拡大していると心臓が横隔膜に沿って拡大するためプローべも横隔膜に対して水平になるように倒します。
評価する部位
- 壁運動異常(心室中隔や左心室後壁)
- 心腔の肥大、拡大の有無
- 弁の動態、性状
- 心筋性状
- 血栓、腫瘍の有無
- 房、僧帽弁、左室、大動脈弁、大動脈と血液の流れ
カラードップラーモードであれば弁膜症も検出可能です。弁膜症の章で確認します。
下の図は心拡大症例であり、明らかに左房、左室の拡大が見られます。
また、左室後壁、心室中隔の輝度の上昇(白くみえる)もあり、壁運動が低下してそうです。
心筋虚血などで心筋壊死になれば輝度は上昇し、菲薄化(薄くなる)してきます。
傍胸骨左縁短軸断面象
傍胸骨左縁長軸断面象を写しながら、大動脈と心尖部に垂直なるように90度回すと出てきます。
短軸像には評価する4面があります。
- 大動脈弁レベル
- 僧帽弁レベル
- 乳頭筋レベル
- 心尖部レベル
- 1. 大動脈弁レベル
大動脈弁の性状を評価します。弁尖の枚数・石灰化・逸脱の有無などです。
同時に右房・右室流出路・左房・心室中隔を評価します。
三尖弁・肺動脈弁は見えないときの方が多いです。
- 2. 僧帽弁レベル
僧帽弁を評価します。前尖、後尖の石灰化や逸脱の有無を評価します。
- 3. 乳頭筋レベル
この画像は左室壁の全周性に見られるため壁運動評価に適しています。
- 0−3時部分―左前下行枝の支配領域
- 3−6時部分―左回旋枝の支配領域
- 3−9時部分―右冠動脈の枝の後下行枝の支配領域
- 9−12時部分―左前下行枝の枝の中隔枝の支配領域
心筋梗塞になると心筋が壊死し、時間が経つと心筋壁が薄くなってきます。
そのため、左室壁の運動低下、菲薄化によって心筋梗塞の原因血管が推測できます。
- 4. 心尖部レベル
心尖部を正確に評価できるにはこの画像だけです。
心尖部肥大型心筋症や左室内血栓の有無を評価します。
心尖部四腔像・三腔像・二腔像
プローべを心尖部移動させ、心尖部レベルを撮しながら、心尖部側に倒し、大血管を見上げるようにすると出てきます。そのままだと右に右室、左に左室が出てくるため180度回して左右反対にします。
- 1. 四腔像(しくうぞう)
四つの腔全てを確認でき、僧帽弁・三尖弁の評価と左室壁運動の評価ができる。
- 2. 三腔像(さんくうぞう)
僧帽弁逆流がプローべに垂直となるため、僧帽弁の評価に最も優れた画像です。
- 3. 二腔像(にくうぞう)
心尖部からのビーム軸を30度時計回り二回転させると出てきます。
心窩部下大静脈断面図
下大静脈(inferior vena cava、IVC)は右房へ繋がるため、下大静脈の血管径を測定すれば右心系の前負荷の測定になります。
- 前負荷 = 心室内血液量
また、血流が少なくなれば呼吸性変動が大きくあり、血流が多くなれば呼吸性変動がなくなります。
呼吸性変動とは吸気時の下大動脈血管径が吸気時の径の50%以下になることです。
下大静脈の血管型が18mm以上であれば右房圧の上昇を意味します。
*右房圧の基準値は5-10mmHg
IVC | 呼吸性変動 | 右房圧 |
18mm以下 | あり | 0-5mmHg |
18mm以上 | あり | 5-10mmHg |
18mm以上 | なし | 10-15mmHg |
18mm以上 | なし | 15-20mmHg |
カラードップラーモードやMモードを使用することで弁膜症や収縮時の壁の厚さなどをより詳しく評価することができます。
各論で詳しく説明します。
まとめ
- ●傍胸骨左縁長軸断面象
左房、僧帽弁、左室、大動脈弁、大動脈の大きさや形と左室後壁、心室中隔などの壁運動を評価します。
- ●傍胸骨左縁短軸断面象
大動脈弁レベル、僧帽弁レベル、乳頭筋レベル、心尖部レベルで大動脈弁、僧帽弁、左室壁運動などを評価します。
- ●心尖部四腔像・三腔像・二腔像
四腔像・三腔像・二腔像で心房心室の大きさと左室壁運動を評価します。
- ●心窩部下大静脈断面図
下大静脈径と呼吸性変動を測定し、血流量を評価します。
臨床的には心不全時のうっ血初見、救急搬送時・ICU入室時の脱水評価などで有用します。
これで今回の心エコーについては終わります。お疲れ様でした。
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