【循環器総論-7】心移植

循環器総論

循環器総論―心臓の生理

  1. 補助循環とは
  2. 大動脈バルーンパンピング(IABP)
  3. 経皮的人工補助法(PCPS)
  4. 左心補助装置(L-VAD)
  5. 心移植

今回は心移植を説明します。

5. 心臓移植とは

心臓移植とは臓器移植の一種亡くなった方から心臓の提供を受けて自分の心臓の代わりに植え込むことです。

提供した方ドナー提供された方レシピエントと呼びます。

  • ではなぜ心臓移植が必要なのでしょうか。

心臓移植を受けなければならない人は、重篤な心機能低下をきたしている方です。

つまり、自分の心臓の動きでは脳や腎臓などの他の臓器が必要な酸素や栄養を送ることができずなんらかの補助が常に必要な状態となっているためです。

https://www.shinzougekashujutsu.com/web/2009/03/post-1774.html
  • 心臓移植が必要になる可能性が高い病気はなんでしょうか?

心臓移植が必要、つまり、重篤な心機能低下になる可能性が非常に高い病気は重篤な特発性心筋症、広範囲の心筋梗塞、高度心機能障害を伴う弁膜症、先天性心疾患などがあります。

  1. 特発性心筋症―拡張性心筋症・拡張相肥大型心筋症・拘束性心筋症
  2. 虚血性心疾患―心筋梗塞後、壊死心筋部位が広範囲にわたっている状態
  3. 心臓弁膜症―弁膜症による不可逆的心機能低下を伴う病態
  4. 先天性心疾患―外科的処置が不可能な状態
  5. その他―神経・筋疾患に伴う2次性心筋症(筋ジストロフィー)、心筋炎、サルコイドーシス、薬剤性心筋障害など
http://www.jsht.jp/registry/japan/

2019年までの20年ほどで500人近い方が心臓移植をされて、その原因疾患のほとんどは心筋症拡張型心筋症拡張相肥大型心筋症拘束型心筋症など)です。

https://withpetyclub.com/detail.php?kid=2258
  • 心臓移植までの臨床的な流れ

まずは強心剤などの薬物治療外科的介入で症状をコントロールします。しかし、徐々に悪化しコントロール不能になり、不可逆的心機能低下となれば補助人工心臓(LVAD)を併用した治療を試みます。

それでも、改善できないほど悪化した際に心臓移植を考慮します。

しかし、全員が心臓移植を受けられるわけではありません。

特に日本は移植を待っている患者(レシピエント)が多くいますが、移植提供者(ドナー)が少ないのが現状です。

日本の心移植の現状について以下、日本心臓移植研究会のまとめ

1999年2月―2019年12月31日 症例数512例を参照にさせて頂きます。

全容を知りたい方は以下URLを添付しますのでご確認ください。

日本心臓移植研究会
日本心臓移植研究会のホームページです
レジストリ20191231.pdf

脳死臓器提供者は2010年法律改正後に年々増加して起きており、2019年には年間100人近くになりました。

臓器提供者のうち、心臓移植の件数も同時に増加してます。

特に改正後は小児の心臓移植件数2018年と比べて2倍以上に増加しています。

適応疾患としては拡張型心筋症が大部分を占めており、それに拡張相肥大型心筋症などの心筋症を含めると、心筋症だけで80%以上となります。

心筋症の治療の困難さが伝わる結果ですね。

日本国内での心臓移植実施施設別件数は以下の通りです。

東京大学病院、国立循環器病センター、東京女子医大病院が同じくらい実施しています。

日本では心臓移植提供者(ドナー)が少ないため、どうしても移植を待っている期間が長くなります。

その際に、有用となるのは左心補助装置(LVAD)と言われる心補助装置になります。

ほとんどのレシピエントは左心補助装置を装着し、移植を待っている状態です。

さらに、左心補助装置(LVAD)を装着期間は以下のようになります。

医学の進歩とともに装着期間は延長してきてます。

臓器移植後、提供された臓器自分の臓器ではないため排除しようとする生体反応(免疫反応)がでます。

免疫反応が出てしまえば提供された臓器は正常に機能できなくなり最悪の場合亡くなることもあります。

そのため、移植後に免疫抑制剤の投与が必須となります。

  • 移植後も免疫療法を継続する

また、移植後の生存も正常成人の生命予後と同様にまで回復するわけではありません。

もちろん、免疫反応などの合併症など抑えるためにきめ細やかな治療が必要となります。

日本での心移植後の累積生存率は10年、15年でそれぞれ89.4%、791%と国際心肺移植学会より良好な成績です。

世界と比べて比較的移植後生存率は高く、安全に移植できると言えます。

大阪大学医学部付属病院 移植医療部を参照に、以下心移植時の手術方法を説明します。

全身麻酔科に胸部正中切開で胸骨を縦に切開します。

人工心肺装置を装着し、レシピエントの心臓を一部を残し(左心房の後壁)取り除きます。

次に、ドナーの心臓を吻合します。

手術は大腿5−6時間程度かかります。

術式には大きく、2つの方法があります。

  1. 心房吻合(Lower-Shumwar法
  2. 大静脈吻合(bicaval吻合法)
  1. 心房吻合(Lower-Shumwar法)

 ドナーの心臓を左心房右心房大動脈肺動脈の順に吻合します。

https://plaza.umin.ac.jp/~jscvs/surgery/5_3_syujutu_sinzou_sinzouisyoku/
  • 2. 大静脈吻合(bicaval吻合法)

 右心房を切除せずに、上下大静脈を切除し吻合します。

左心房上下大静脈大動脈肺動脈の順に吻合します。

日本では北村先生がレシピエントの上下大静脈を完全切除しない方法を用いている施設が多いです。

https://plaza.umin.ac.jp/~jscvs/surgery/5_3_syujutu_sinzou_sinzouisyoku/

このように心移植は非常に重篤な心臓疾患を直す最後の方法です。

適切な時期にドナーから摘出できれば移植後の生存率は非常にいいと言えます。

これで今回の心移植に関しては終わります。お疲れ様でした。

Image by Mabel Amber from Pixabay

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